労使協定方式 労使協定の保存期間
前回は、「労使協定の提出」について解説させていただきました。
今回は、「労使協定の保存期間」について解説したいと思います。
派遣元事業主は、労使協定を締結した時は、労使協定に係る書面をその有効期間が
終了した日から起算して3年を経過する日まで保存しなければならない。
(派遣法施行規則第25条の12)
となっていますので、労使協定の期間が終了したからといって破棄してしまわない
ようご注意ください。
今回で労使協定の説明は終了となります。
『労働者派遣契約の結び方』をご購入いただいた方は2020年4月改正後の派遣関係書類の様式(記載例付き)をダウンロードしていただけます。
本書は、3年間、大阪労働局の需給調整事業部(派遣法の指導監督を行っている部署)で需給調整事業専門相談員として派遣会社や派遣先の企業、社労士や弁護士の方からの相談業務を担当していた筆者が、労働者派遣法のことが全く分からない方や派遣業務が未経験の方でも簡単に派遣関係書類(今回説明させていただいた労使協定や個別契約書等)が作成できるよう、記載例も掲載しわかりやすく解説させていただいています。
本書をご購入いただいた方につきましては、すぐに使える2020年4月の派遣法改正後の各種派遣関係書類(ワード形式)を税務経理協会様のホームページからダウンロードしていただけます。
また、令和3年8月6日に公表された「令和4年度から適用される労使協定の記載例」及び令和3年1月と4月に行われた派遣法改正に対応した派遣関係書類(ワード形式)も税務経理協会様のホームページからダウンロードしていただけます。
派遣元の担当者の方や派遣先の担当者の方、社会保険労務士の先生方など派遣業務に携われる方は是非、ご一読ください!
本書は専門書のため、ジュンク堂書店、紀伊国屋書店等の大型書店にてお買い求めいただけます!
(資料)
厚生労働省 「労働者派遣事業関係業務取扱要領(2021年4月)」
https://www.mhlw.go.jp/general/seido/anteikyoku/jukyu/haken/youryou_2020/dl/all.pdf
厚生労働省 「不合理な待遇差解消のための点検・検討マニュアル(労働者派遣業界編」
https://www.mhlw.go.jp/content/11909000/000501271.pdf
厚生労働省 「同種の業務に従事する一般労働者の賃金水準(令和2年度適用)」
https://www.mhlw.go.jp/content/000595429.pdf
厚生労働省 「同種の業務に従事する一般労働者の賃金水準(令和3年度適用)」
https://www.mhlw.go.jp/content/000685419.pdf
厚生労働省 「同種の業務に従事する一般労働者の賃金水準(令和4年度適用)」
労使協定方式 労使協定の提出
前回は、「労使協定の周知」について解説させていただきました。
今回は、「労使協定の提出」について解説したいと思います。
労使協定を締結した後は、当該労使協定を提出しなければいけません。
提出先等は以下のとおりとなります。
提出先:各都道府県労働局 需給調整事業部(事業課)
提出するもの:労使協定の写し
※ 当該協定において就業規則や賃金規程等を引用
している場合は、就業規則や賃金規程等の該当
箇所も併せて添付する必要があります
→ 労使協定の中で「就業規則第〇条の内容を
適用」としていた場合は、その就業規則の
コピーも併せて提出する必要があります。
※ 労使協定の有効期間を2年以上としている場合
は、有効期間中に労使協定の内容が新たに発出
された職業安定局長通知の基準を上回ってるこ
とを確認し、上回っていれば確認した旨を書面
に記載し、労使協定に添付する必要があります。
この確認した旨の書面も事業報告書に添付する
必要があります。
提出期間:毎年6月1日~6月30日の間
(事業報告書に労使協定を添付する形で提出します)
労使協定と言えば通常は労働基準監督署への提出(36協定等)を思い
浮かべる方もいるかもしれませんが、今回の労使協定は労働者派遣法に
基づく労使協定であるため、各都道府県労働局の需給調整事業部(課)
へ提出し、労働基準監督署への提出は不要となります。
ただし、労働基準監督署への当該労使協定の提出は不要ですが、今回の労
使協定は派遣労働者の賃金の決定に関する労使協定であるため、当該労使
協定の締結により就業規則の内容に変更が生じた場合は、就業規則を変更
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厚生労働省 「労働者派遣事業関係業務取扱要領(2021年4月)」
https://www.mhlw.go.jp/general/seido/anteikyoku/jukyu/haken/youryou_2020/dl/all.pdf
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https://www.mhlw.go.jp/content/11909000/000501271.pdf
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https://www.mhlw.go.jp/content/000685419.pdf
厚生労働省 「同種の業務に従事する一般労働者の賃金水準(令和4年度適用)」
労使協定方式 労使協定の周知
前回は、「労使協定の労働者代表の選任方法」について解説させていただきました。
今回は、「労使協定の周知」について解説したいと思います。
労使協定の締結後、労使協定を労働者に周知しなければなりません。
ここで気を付けていただきたいことは、「労使協定を周知する労働者は、派遣元の
会社で働くすべての労働者が対象になる」ということです。
派遣労働者はもちろん、派遣労働者以外の正社員、有期雇用労働者、パートタイ
マ労働者等にも当該労使協定を周知しなければいけません。
また、その派遣労働者を雇用している事業所に所属している労働者だけではなく、
会社全体の全ての労働者に当該労使協定を周知していただく必要があります。
(例えば、○○○○(株)大阪支店のみ派遣の許可を取得している場合は
○○○○(株) 大阪支店に所属している派遣労働者だけでなく、○○○○(株)
全体のすべての労働者に労使協定を周知しなければいけません)
周知は、次のいずれかの方法により行わなければいけません。
① 書面の交付の方法
② 次のいずれかによることを労働者が希望した場合における当該方法
・ファクシミリを利用してする送信の方法
・電子メール等の送信の方法
→ FAXや電子メールにて労使協定の全文を労働者に渡す方法
です。ただし、この方法は労働者が希望した場合に限るため、
希望していない労働者に対して一方的に送ることの無いよう
お気を付けください。
③ 電子計算機に備えられたファイル、磁気ディスクその他これらに準ず
る物に記録し、かつ労働者が当該記録の内容を常時確認できる方法
→ 具体的には、例えば、労働者にログイン・パスワードを発行し、
会社のホームページ等で常時確認できる方法等です。
④ 常時派遣元事業主の各事業所の見やすい場所に掲示し、又は備え付け
る方法(ただし、労使協定の概要については、すべての労働者に書面
、FAX又は電子メール等により交付する場合に限ります)
→ 労使協定の概要には、少なくとも、「労使協定の対象となる派遣労働者
の範囲」「派遣労働者の賃金(基本給、通勤手当、退職手当等)の決定
方法」及び「労使協定の有効期間」の内容を盛り込まなければいけませ
ん。
労使協定の概要の記載例は以下のような感じになります。
※ 画像をクリックすると拡大表示されます
労使協定は「賃金の決定事項」も含まれるので、複数の職種を労使協定対象派遣労働
者としている派遣元については、かなりの枚数になると思います。
上記のことも踏まえてどの方法で周知されるかご検討ください!
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厚生労働省 「労働者派遣事業関係業務取扱要領(2021年4月)」
https://www.mhlw.go.jp/general/seido/anteikyoku/jukyu/haken/youryou_2020/dl/all.pdf
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労使協定方式 労使協定の労働者代表の選任方法
前回は、「労使協定の締結単位」について解説させていただきました。
今回は、「労使協定の労働者代表の選任方法」について解説したいと思います。
労使協定の労働者代表(労働者の過半数を代表する者)の選任方法は、
① 労働基準法第41条第2号に規定する監督又は管理の地位にある者ではな
いこと
② 労使協定をする者を選出することを明らかにして実施される投票、挙手等
の民主的な方法による手続により選出された者であって、派遣元事業主の
意向に基づき選出されたものでないこと
のいずれの要件にも該当する者を選任していただくことになります。
「投票、挙手等」の方法としては、「投票、挙手」のほか、労働者の話し合い、
持ち回り決議等労働者の過半数が当該者の選任を支持していることが明確になる
民主的な手続きが該当します。
また、①の「労働基準法第41条第2号に規定する監督又は管理の地位にある者
ではない」に該当する者がいない場合、つまり、「その会社又はその事業所に労
基法第41条第2号の管理監督者しかいない場合」は、その管理監督者の中から
投票や挙手等の民主的な方法で過半数労働者の代表者を選任することになります。
この「過半数労働者の代表者の選任」についての注意点は、
② 今回の過半数労働者の代表者は36協定の代表者を据える方法はダメ
③ 過半数労働者の代表者の選任が派遣会社が勝手に選任する等適切に行
われなかった場合は、労使協定の締結が適正に行われなかったと見な
され、その場合は最初から派遣先均等・均衡方式が適用されてしまう。
となります。
①の「過半数労働者の代表者は派遣労働者でなくてもいい」とは、今回の労
働者の過半数代表者の選任は派遣労働者の賃金等に関する労使協定の締結に
伴うものすが、過半数労働者の代表者は必ずしも派遣労働者の中から選ばな
いといけないものではなく、派遣労働者以外の者が過半数労働者の代表者と
なることも問題ありません。
ただし、「投票、挙手等の民主的な方法による手続により選出された者」で
なければいけませんので、会社側が勝手に選任することはできません。
②の「今回の過半数労働者の代表者は36協定の代表者を据える方法はダメ」
とは、殆どの会社で毎年残業時間の労使協定である「36協定」を締結して
いると思いますが、今回の派遣法の労使協定方式の過半数労働者の代表者を
「36協定の代表者と同じ労働者にしておこう」ということで、勝手に36
協定の代表者をそのまま据えることはできません。
もし、そのようなことが後で発覚した場合は、労使協定の締結が適正に行わ
れていないと見なされ、労使協定が初めから無効となり、派遣先均等・均衡
方式が適用されてしまう可能性があります。
今回の労使協定方式の過半数労働者の代表者を選任する場合は、「派遣法改
正に伴う労使協定方式に係る労使協定の締結」であることを明らかにしたう
えで、投票、挙手等の民主的な方法による手続を経て、労働者の代表者を選
任しなければいけないのでくれぐれもご注意ください。
ただし、上記の方法により適切な手続きを経た結果、たまたま36協定の代
表者と同じ者だったということは何の問題もありません。要は手続きを適正
に行ったかどうかが重要なのです。
何度も申し上げますが、適切に労使協定の締結がなされなかった場合は、労
使協定が無効となり、派遣先均等・均衡方式が適用されてしまいます。
もしそのようなことになった場合は、最初から派遣先均等・均衡方式に基づ
く手続きを行って、派遣労働者の賃金を一から算定しなおさなければならず、
派遣元・派遣先ともかなりの時間的・経済的負担を強いられることになります。
また、令和2年10月21日に厚生労働省から、
「過半数代表者の適切な選出手続きを
~選出するにあたっての5つのポイントをご紹介します~」
というリーフレットが公表されています。
(出典:厚生労働省「過半数労働者の適切な選出手続きを~選出するにあたっての5つのポイントをご紹介します~」)
(上記画像をクリックすると厚生労働省のホームページに移動します)
労使協定方式を採用する場合は、必ず労使協定を締結しなければいませんが、この
リーフレットはその労使協定を締結する際の過半数代表者の選出方法について、気
を付けなければいけないポイントを示しています。
リーフレットに記載されている5つのポイントは以下のとおりです。
① 過半数代表者となることができる労働者の要件があります
② 過半数代表者を選出するための正しい手続きが必要です
③ メールなどで労働者の意向を確認する場合には、意思の確認に特に注意が必
要です
④ 派遣労働者の意見の反映をすることが望ましいことです
⑤ 過半数代表者が事務を円滑に遂行できるよう配慮することが必要です
【東谷解説】
① 過半数代表者となることができる労働者の要件があります
過半数代表者になるためには以下の要件を満たす必要があります。
いわゆる管理監督する地位にある方は過半数代表者とはなれません。
ただし、労使協定を法人単位で締結する場合は、法人全体で管理監
督者しかいない場合、労使協定を事業所単位で締結する場合はその事
業所全体で管理監督者しかいない場合は、管理監督者であっても過半
数代表者となることができます。
・ただし、この場合も過半数代表者を選出するための正しい手続きを行
う必要があります。これは次の②で説明します。
※ 過半数代表者は必ずしも派遣労働者でなければいけないわけではあ
りません。派遣労働者以外の正社員やパートタイム労働者、有期雇用
労働者が選出された場合は、その者を過半数代表者としなければいけ
ないことにもご注意ください。
② 過半数代表者を選出するための正しい手続きが必要です
過半数代表者は正しい手続きを経て選出する必要があります。
正しい手続きとは、投票や挙手のほかに、労働者の話し合いや持ち回り決議
などでも良く、労働者の過半数がその人の選任を支持していることが明確にな
る民主的な手続きが必要です。
法人単位で労使協定を締結する場合は、その法人全体の派遣労働者はもとよ
り、派遣労働者以外の正社員、パートタイム労働者、有期雇用労働者を含めた
すべての労働者が手続きに参加する必要があります(つまり、投票手続きは全
ての労働者に対して周知した上で、全員投票に参加させて行う必要があるとい
うことです。ちなみにこの全ての労働者には、その派遣元で他の派遣会社から
受け入れている派遣労働者は含みません。理由はその派遣元で雇用されていな
いからです)。
事業所単位で労使協定を締結する場合は、その事業所全体の派遣労働者はも
とより、派遣労働者以外の正社員、パートタイム労働者、有期雇用労働者を含
めたすべての労働者が手続きに参加する必要があります。
正しい手続きとは言えない場合としては、会社の社長や役員等が特定の労働
者を指名して過半数代表者とすることなどがあげられます。
また、既に36協定の過半数代表者を選出していた場合で、そのまま、その者
を労使協定方式における労使協定の代表者に据えることも、正しい手続きを行
ったとは見なされません。なぜなら、労使協定方式を採用することをすべての
労働者に周知した上で過半数代表者を選定しなければいけないという要件を満
たしていないためです(ちなみに、適正な手続きを経たうえで、たまたま、
36協定の過半数代表者と被った場合は特に問題ありません。要するに適正に手
続きを経たかどうかが重要となります)。
もし、適正な手続きを経ずに過半数労働者を選出した場合は、その労使協定
自体が無効となり、遡って派遣先均等・均衡方式が適用されることになるので
ご注意ください。
③ メールなどで労働者の意向を確認する場合には、意思の確認に特に注意が必
要です
これは、厚生労働省から今回初めて示された考え方です。
派遣労働者を含む全ての労働者に対してメールで通知を行い、そのメールに対
する返信のない人を信任(賛成)したものとみなす方法は、一般的には、労働者
の過半数が選任を支持していることが必ずしも明確になっていないと考えられ、
適正な方法とは見なされない可能性があるということです。
では、方法としては実際どのように行うかというと、全ての労働者に対してメ
ールで通知を行い、返信がない労働者に対しては、電話や聞き取りにより直接労
働者の意見を確認し、そのことを記録する方法などが挙げられます。
④ 派遣労働者の意見の反映をすることが望ましいことです
できるだけ派遣労働者(その派遣元で雇用されている)の意見を反映するよう
にした方が望ましいということです。
これは必ずしも行わなければいけないわけではありませんが、できるだけそのよ
うな取組みをした方がいいでしょう。というお話です。
⑤ 過半数代表者が事務を円滑に遂行できるよう配慮することが必要です
できるだけ過半数代表者の選任に関する事務が円滑に遂行するように、会議室や
パソコンの提供等をしてあげてくださいということです。
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厚生労働省 「労働者派遣事業関係業務取扱要領(2021年4月)」
https://www.mhlw.go.jp/general/seido/anteikyoku/jukyu/haken/youryou_2020/dl/all.pdf
厚生労働省 「不合理な待遇差解消のための点検・検討マニュアル(労働者派遣業界編」
https://www.mhlw.go.jp/content/11909000/000501271.pdf
厚生労働省 「同種の業務に従事する一般労働者の賃金水準(令和2年度適用)」
https://www.mhlw.go.jp/content/000595429.pdf
厚生労働省 「同種の業務に従事する一般労働者の賃金水準(令和3年度適用)」
https://www.mhlw.go.jp/content/000685419.pdf
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労使協定方式 労使協定の締結単位
前回は、労使協定の書式について記載例を紹介させていただきました。
今回は、「労使協定の締結単位」について解説したいと思います。
労使協定は、
① 派遣元事業主単位
② 労働者派遣事業を行う事業所単位
③ 複数の労働者派遣を行う事業所単位
のいずれかの単位で締結することができます。
① 派遣元事業主単位
派遣元事業主単位では、派遣会社と労働者代表とで1つの労使協定を締
結します。
通常は、この方法で締結される派遣会社が多いと思います。
② 労働者派遣事業を行う事業所単位
労働者派遣事業を行う事業所単位では、派遣元の「派遣事業の許可を取
得している事業所」と「その事業所の労働者代表」とで労使協定を締結し
ます。
例えば、「○○○○(株)大阪支店」で派遣事業の許可を取得していた場
合、大阪支店の会社側代表者(例えば、支店長等)と大阪支店の労働者代
表とで労使協定を締結することとなります。
③ 複数の労働者派遣を行う事業所単位
複数の労働者派遣を行う事業所単位では、派遣元の派遣事業の許可を取
得している事業所をグループ分けして、それぞれのグループごとに、会社
側代表者と労働者代表とで労使協定を締結します。例えば、全国展開して
いる派遣会社で、各都道府県に支店があり、それぞれ派遣事業の許可を取
得している場合は、近畿エリアでは、近畿エリアの会社側代表者と労働者
代表とで、九州エリアでは、九州エリアの会社側代表者と労働者代表とで
労使協定を締結します。
ただし、①~③のいずれの場合でも、「派遣労働者の待遇を引き下げることを
目的として、恣意的に締結単位を分けることは労使協定方式の趣旨に反するも
のであり、適当ではない」とされています。
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労使協定方式 労使協定の記載例
前回までは「労使協定に定めなければいけない事項」について説明させて
いただきました。
今回は、労使協定の実際の記載例をご紹介させていただこうと思います。
労使協定の記載例は、厚生労働省のホームページにも掲載されています。
※ 画像をクリックすると厚生労働省のホームページに移動します
上記の厚生労働省の記載例は、難しくてよくわからないという方は、私
が作成した労使協定の記載例も掲載しておきますので、よろしければご
参照ください。
【労使協定 記載例(東谷社会保険労務士事務所作成分)】
労使協定の条件は以下のとおりとします。
・職種:システム設計技術者、ソフトウェア開発技術者、経理事務員
施設介護員、訪問介護員
・賃金等級:3等級に区分
・賞与:支給しない
・通勤手当:全額会社負担(実費支給)
・退職金:退職金制度を採用
※ 画像をクリックすると拡大表示されますす
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厚生労働省 「同種の業務に従事する一般労働者の賃金水準(令和4年度適用)」
労使協定方式 労使協定の作成方法⑨ 途中で待遇決定方式を変えない旨
労使協定に定めなければいけない事項については、以下の通りとなります。
※ 画像をクリックすると拡大表示されます
前回は、【労使協定の対象となる派遣労働者の範囲を派遣労働者の一部に限定する
場合におけるその理由】について説明いたしました。
今回は、【特段の事情がない限り、一の労働契約の契約期間中に、当該労働契約に
係る派遣労働者について、派遣先の変更を理由として、協定対象派遣労働者である
か否かを変更しない旨】について説明したいと思います。
【特段の事情がない限り、一の労働契約の契約期間中に、当該労働契約に係る派遣
労働者について、派遣先の変更を理由として、協定対象派遣労働者であるか否か
を変更しない旨】
「労働者派遣事業関係業務取扱」には、「派遣労働者の待遇決定方式(「派遣先均
等・均衡方式」又は「労使協定方式」のことをいいます)が、派遣先の変更を理
由として、一の労働契約期間中に変更されることは、所得の不安定化を防ぎ、中
長期的なキャリア形成を可能とする労使協定制度の趣旨に反する恐れがあること
から、特段の事情がない限り、認められないことを労使協定に記載すること」と
規定されています。
要するに、労使協定対象派遣労働者(労使協定に基づいて賃金額が支払われる派遣
労働者)として派遣先で働いていたのに、その派遣労働者の雇用契約期間の途中で
派遣先が変わることによって、派遣元から「君、明日から労使協定に基づいた賃金
額ではなく、派遣先均等・均衡方式で賃金額を計算するからね」というような取り
扱いはしないことを労使協定の中に明記しなさい!ということです。
ただし、以下の「特段の事情」がある場合には、一の労働契約の契約期間中でも待
遇決定方式を変更することができます。
① 労使協定の対象となる派遣労働者の範囲が職種によって定められている場合
であって、派遣労働者の職種の転換によって待遇決定方式が変更される場合
で、かつ当該派遣労働者から合意を得た場合
→ 例えば、プログラマーは労使協定の対象となっているが、システムエ
ンジニアは労使協定の対象となっていない場合で、当初、プログラマ
ーの職種で派遣されていた派遣労働者が、次の派遣先ではシステムエ
ンジニアの職種に派遣されることになり、その派遣労働者に対して労
使協定の対象から外れることについて説明した上で、その派遣労働者
から同意を得た場合等を意味します。
・待遇決定方式を変更しなければ派遣労働者が希望する就業機会を提供できない
場合であって、当該派遣労働者から合意を得た場合
→ 例えば、プログラマーは労使協定の対象となっているが、システムエ
ンジニアは労使協定の対象となっていない場合で、当初、プログラマ
ーとして派遣就業していた派遣労働者が、「次の派遣先は、是非、
●●●●(株)で派遣就業したい。そこはプログラマーではなく、シス
テムエンジニアでの派遣労働者しか求めていないが、自分もシステ
ムエンジニアの経験があるので、システムエンジニアとして派遣就
業したい」という希望があった場合に、その派遣労働者に対して労
使協定の対象から外れることについて説明した上で、その派遣労働
者から同意を得た場合等を意味します。
【記載例】
(対象となる派遣労働者の範囲)
第○条 本協定は、派遣先で以下の職種の業務に従事する従業員(以下「対象従
業員」という)に適用する
2 対象従業員については、派遣先が変更される頻度が高いことから、中長期
的なキャリア形成を行い所得の不安定化を防ぐため、本労使協定の対象と
する。
3 対象従業員について、一の労働契約の契約期間中に、特段の事情がない限
り、本協定の適用を除外しないものとする。
今回で「労使協定に定める事項」の説明はすべて終了となります。
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本書は、3年間、大阪労働局の需給調整事業部(派遣法の指導監督を行っている部署)で需給調整事業専門相談員として派遣会社や派遣先の企業、社労士や弁護士の方からの相談業務を担当していた筆者が、労働者派遣法のことが全く分からない方や派遣業務が未経験の方でも簡単に派遣関係書類(今回説明させていただいた労使協定や個別契約書等)が作成できるよう、記載例も掲載しわかりやすく解説させていただいています。
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(資料)
厚生労働省 「労働者派遣事業関係業務取扱要領(2021年4月)」
https://www.mhlw.go.jp/general/seido/anteikyoku/jukyu/haken/youryou_2020/dl/all.pdf
厚生労働省 「不合理な待遇差解消のための点検・検討マニュアル(労働者派遣業界編」
https://www.mhlw.go.jp/content/11909000/000501271.pdf
厚生労働省 「同種の業務に従事する一般労働者の賃金水準(令和2年度適用)」
https://www.mhlw.go.jp/content/000595429.pdf
厚生労働省 「同種の業務に従事する一般労働者の賃金水準(令和3年度適用)」
https://www.mhlw.go.jp/content/000685419.pdf
厚生労働省 「同種の業務に従事する一般労働者の賃金水準(令和4年度適用)」